2015年7月19日日曜日

血行再建まとめ

血行再建について

・早期の血行再建、最終内固定方法のイメージをもつ

・治療方針
(1)3〜4時間以内
(2)健側と比較
(3)術前血管造影は禁忌(時間がかかる、IVRしないならスキップ)
  造影CTは撮影

・治療手段
外科的血行再建か、IVRか
 1,造影CT、Hard signの検討
 2,完全断裂以外はIVRができる
 3,Non Stenting Zone
 (股関節、膝関節などは、可動性と分枝の多さから永続的ステントの使用は比較的禁忌)

・Hard sign
 拍動性出血
 急速に増大する血腫
 阻血性徴候

・血行再建の手段選択
 4時間に余裕がある場合:静脈採取→動脈移植
 間に合わない場合のshunt利用
  refill ○ Temporary shunt × Cross limb shunt (Lee 2011)
  ※ 近位断端が見えない場合は、intra -intra shuntは難しいので、
           Cross limb shunt / intra distal shuntが選択される
  ※ Cross limb shuntは逆行性血管造影を行える

・Venus shuntの必要性
  →intra vascularも使用して出血量を減少させる
    ※静脈をつなげないと出血量が4000ml、切断症例は必須!
    ※つなげる断端を破く可能性があるため、second venusのほうが?
    Majorな静脈には敬意を払う
    ※Kが高い血液が送血されるため、カルチコールを事前に使用
  →Vを繋ぐ前に、まず少し出血させてからつなぐ

・Cross limb shuntの用意
 φ3mm以上の両端雄のヘパリンコーティングシャント(人工心肺回路用2000円)
  →ヘパリンコーティングじゃないと詰まりやすい
 鼠径 6Fr Aシース
 足背 4Fr Aシース

・体位について
 仰臥位(内側アプローチ) 94分
 腹臥位(後方アプローチ) 163分
 ゆるめの側臥位(froopy position、大伏在静脈は取りやすい)

・仰臥位内側アプローチについて
  ・メリット
  仰臥位で静脈採取しておけば時間が70分早くなる
  麻酔をかけながら、デブリードマンなどが出来る
  術野の拡大が出来る
  膝関節可動域

  ・デメリット
  経験が必要
  腓腹筋内側頭などの切離が必要
  血管吻合の場所が深い

メモ
・造影欠損→側副血行路があっても、膝窩動脈重要であり修復しよう
・腋窩動脈解離による動脈阻血→refillがある場合は、まずIVRで修復(JBJS case reportより)


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血管縫合

・血管の確認
 patencyが早くないといけない(Back flowの確認)
 Zone of injuryの近位を狙う
 Back wall tech
 縫合 → 外側に引っ張る、前側に引っ張らない
 静脈のBack flowが無いときは(タニケをしていても通常Back flowがある)
 小児用硬膜外カテーテルを入れ、Back flow確認。
 血管が柔らかく使用できる状態であれば利用可能。

・縫合練習方法
 鶏肉、足や胸肉の血管を使用し、タイムトライアルや縦割して評価することが重要。
 筋間中隔から目標まで追う練習は皮弁の練習になる、豚足で皮弁練習が出来る。

・LD皮弁でのエコー使用(実演)
 クロールするポジションに臥位をとる
 腋窩中央線にスケッチ、そこから筋間の血管を同定、血管茎をドップラーで同定、追う
 一週間前に血管を確認し、Zone of injuryのスケッチ。
 手術前日にも血管を確認する


おまけ <以前の新潟手の外科血管縫合特訓での所感>

1,血管径1~2mmの時には【8針のみ】で雑でも一撃で縫合。

 「縫合が下手なので気合い入れて縫合しない。」位の気持ちだと力み加減が良かった。
縫合部をきつく縫合し、細かく縫って狭窄する原因となった。
きれいさを追求してバイトを小さくすると、内膜に貫通しない
(糸が内膜を貫通しないと血管壁再生が起こらず、電子顕微鏡レベルで見て段差ができる。)
ことが多かった。
 集中力も針数が増えると非常に減退しているのが自分でもわかった。

<心がけたこと>

(1)バイトを多少大きくしても内膜貫通に集中する。
(2)ダブルでの縫合は緩くする。次のシングルはきつめ。
(3)絶対に8針だけで縫って止めてやろうとする強い意志
 流速が強いと出血がひどいので、遠位部のクランプだけを一度解除して血流を一回縫合部に開通させて再クランプする。縫合部の内膜組織の再生が促され、ゆるめに縫合してあるような狭窄を起こさないことに心がけてある縫合でも5分位置くと出血しなくなる。特に、頸動脈は出血がガーゼ圧迫やfatを置くなどの姑息的手段では全く止血できないため有効。

<懸案事項>

(1)内膜再生に期待することが人間の血管も有効なのか。
(2)切断指だと血流は近位クランプのみ有効。応用できるか不明確。
(3)血管径が大きいときは針数を自分の能力範囲内で増やすのがベスト?

2,外膜は切りすぎない。

切りすぎて持つところが無くなって縫合しにくい。血管壁を持ちかねない。

3,ステイ以外の余計な糸はさっさと切ってしまう。

 縫合が妨げられることが多かった。切ったあとも外膜をつかむよりはつかみやすいので、縫合したらきれいにカットしたほうが良かった

4,環境整備

 ステイの糸は組織にくっつけとく。縫合場所にゴム手袋破片をバックに置く。常にネズミの歯にゴム引っかける。麻酔は1縫合で1時間分使用。ねじれが起こらないようにダブルクランプを置くように注意。頸動脈は近位部はダブルクランプをする方が良い。

5,静脈グラフトは切る前に処置

 動脈の時には簡単だった外膜処置が難しいので、グラフトの前に外膜や周辺組織をトリミング。切った瞬間に弾力性が無くなって扱いづらい。

6,頚部の周辺組織は切らず、避けすぎず。

 片肺換気、努力様呼吸になって二匹とも死んだので横隔神経を切ったか。正中部の剖出はしない。逆に、外側過ぎると静脈に当たった。

重度四肢外傷セミナー③足部再建

足部再建術の戦略のまとめ(未確定)

・acceptable foot
(1)痛みがない
(2)荷重とスムーズな体重移動
(3)市販靴がはける

 opptional point 踏返しの代償方法
 1,足関節の固さ
 2,前、中足部の関節可動域での踏み込み

・Gait 動的バイオメカニクスの中で機能が備わっている

・解剖学的ポイント
(1)ヒールパッド
(2)荷重部
(3)圧迫/剪断
(4)アキレス腱部

・皮弁のポイント
傍肩甲皮弁、広背筋弁などを使用 → バルキーで靴が履けない!
(1)大きさ、サイズ
(2)圧迫、剪断
(3)安定性と弾力(柔軟性と強度)
  Fillet flap 踵再建が可能
  Local flapは傷つきやすい
  皮弁部が動く感じがするため、アンカーで固定する

・解剖学的ポイント
内側縦アーチ、足底腱膜、ばね靱帯、種子骨、fat pad
真皮 →抗剪断力
横アーチ →分散
内在筋、後脛骨筋 →機能不全
TA<< TP 凹足変形へ

・Temporary pinnning
→軟部組織を落ち着ける、ただ、軟部組織がダメージがあると逆に感染しやすくなる

※ GastiloⅢBは 有茎皮弁か、遊離皮弁か?
腓腹筋弁、残した皮膚が壊死した例
 → 血管柄の折り返しに注意、VAF阻血してしまう


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山野先生の手術のポイント
(1)24時間以内、デブリードマンではなく、そのまま皮弁を使用して血行再建してしまえば、
実は感染はあまりしない。
(2)細菌は指数関数状に増加していくため、早期手術で回復できる。

重度四肢外傷セミナー②手の再建

手の再建についてのまとめ

・acceptable hand
つまめる手にする(機能的母指、ある程度の長さ、知覚、運動が可能な3本の手)

・治療方針
外観、場、リハビリ

・皮弁について
上肢は基本皮弁を使用する
筋弁は広範囲損傷、筋層がない時に限った方が良い
筋弁は除脂術を複数回使用

・解剖学的位置での違い
1,前腕遠位部 パラテノンが残っているかどうか
○ 植皮
× 腱の滑走障害を念頭に置く、皮弁を使用

2,上腕部損傷
○ 植皮
× 有茎皮弁

3,手関節、手部
 有茎浅腹壁動脈皮弁
 逆行性橈側前腕皮弁
 後骨間動脈皮弁(Allen test必須)

4,指尖部
 石川分類 基本、局所皮弁
 1・2,V-Y前進皮弁
 3・4,逆行性指動脈島状皮弁

・Mangled Hand Chen gradeで評価


追記メモ

小児60~100%皮弁も伸びるので、使用できないことはない

ジェルRENASYS
ヒンジ付の創外固定+NPWT

感染と繊維化の回避

指間はピンで広げておいて、腹壁皮弁(biological globing)

血管の周りを綿で包むことでスパズムを予防する
橈骨神経の回復は早い

末梢血行、局所血行を確保する

PIP固定 Ⅱ指(40度)〜Ⅴ指(55度)


重症四肢外傷セミナー①基礎セミナー、総論(20150718)

日本でのガイドラインはイギリスの
【OPEN FRACTURE OF THE LOWER LIMB】を参照として作成中。

・治療方針
Fix and Flap

初回手術はデブリードマン、損傷評価(部位、解剖、機能で分類)
 受傷エネルギー E = mgh + mv^2/2
 重さ、高さ、早さ

・優先順位
1, Blood supply
2, Nerve
3, Tendon/ muscle
4, Joint
5, Bone
 例Ⅰ)ロッキングプレート、ピンニングで強固な固定、リハビリを優先
 例Ⅱ)神経に合わせるために、骨短縮術、大きめ皮弁

・感染予防
1,デブリードマン(皮膚はそれなり、筋体はがっつり)
2,抗菌薬
3,骨・軟部組織の安定化
4,早期創閉鎖

・骨の再建について
長さ、軸アライメント、回旋に注意
spanning(創外固定)、骨短縮術、Masquelet法
  追記)BMP-2, VEGF, TGF-β1 Membrane
 ※後日の骨延長を考える場合に、動脈のたわみと神経のゆとりが重要で、
 しかし、たわみすぎると静脈であれば閉塞の可能性が増す。
 盲端を使用するよりは、エコーで確認して使える静脈をグラフトで延ばす。
 1st 手術は、表在血行だけで賄う事も考える

・骨再建方法の検討
 1,部分、6cm>  6cmで若年層
 BG, Masquelet法、随伴VBG、bone transport
 2,6cm< 壮年期
 FVFG、随伴VBG with M

・軟部組織について
Local damage control、落ち着けるか、早期手術か

・軟部組織の治療手段
1,Primary closure
2,Secondary tissue graft
3,NPWT(細菌除去、7日以内は感染が少ない)
4,Local flap
5,Pedided flap
6,Skin graft

・Mustの皮弁って?
①広背筋弁、傍肩甲筋弁
②腓腹皮弁
③上腕外側皮弁
④内側足底皮弁

・Zone of vascular injury
 エコーでhigh intensity の領域は、炎症と線維化が盛んにあり問題あり、デブリ対象
 造影CTやカテで血管交通を確認

・デブリードマンのポイント
 尖刀/シェーバーの利用
  smith & nephew バーサジェット メス刃が高くて病院持ち出しになる
 筋体のデブリードマンはしっかりと、感染予防
【MT4,5はコンパートメントデブリードマンが必要】
 デブリードマンは2回行なう場合は、1回目の術者では無い方が良い → 思い入れが出てしまう

・デブリドマンジレンマ
1,関節軟骨
2,神経
3,腱

・イリザロフか、皮弁+plateか
  関節機能の再建、軟部組織の再建
  理想は、GⅢBの場合は、
  皮弁形成術、骨移植 → ダメなら、VB+イリザロフ
  Masquelet法でのセメントブロックは、二つに分けてちくわ状に付けると後で取りやすい

・I.C.のポイント
 10%血管トラブル、5%はダメになる、1時間以内Global ischemia
 損傷コンパートメント浮腫、線維化が進行 3日以内に出現

・治療評価方法
 Ganga Hospital Injury Severity Classification, Scoreでの評価

・術後の体位
 例:胸背動脈が阻血しやすいため、腋窩を開ける